ケシ
ケシの花は美しく人を誘います。人がそれに引きつけられ、もたらされる幸せに酔いしれると、花は剣に変わって人を麻酔させ、命を削り、心まで傷つけます。だからその花言葉は、死への愛とされています。
山の野ケシ、虞美人が風に揺れる姿は、ふだんは不運の根こそぎから逃れられないことも知りません。ロマンチックな死を口にする人もいますが、本当は死ぬわけにはいけない花です。愛するにはおっくうで、それでいて捨てがたい。ケシの花はまさにそんな愛にたとえられます。人を寄せつける美しさの奥に、魅了してやまない罠を仕込んだ花とも言われます。圧をかけるのではなく、触れたら離れないのだと静かに知らせてくるのです。だから花言葉は気高さや華麗さ、そして捨てられない愛へと広がっていきます。

ケシの花の言葉
ケシは希望を表す一方で、愛する人を傷つける、毒と悪意を示すとも言われます。
悲しげな赤いケシは、慰めや悲しみのなぐさめを表します。
白いケシは、忘れられた人や初恋を意味します。
橙色の大きな花のケシは、平安と服従を表します。
ケシそのものは、毒と悪意の象徴ともされます。
背の高いケシは、忍耐を意味する花とされます。
長い実を持つケシは、休息や安らぎを表します。
美しいケシは、容貌の麗しさや美貌を表します。

ケシの伝説
ケシはそれ自身に香りがなく、それゆえ人を誘うわけではありません。汚れを宿した人間がその花に罪のある手を広げたことで、不名誉な名を担わされることになりました。ケシは新石器時代には見つかって使われていました。五千年以上前、シュメール人はこれを神が与えた幸せな草と呼び、古代エジプト人も泣きやまない幼児をあやす秘薬とみなしました。紀元前3世紀には、ギリシャやローマの書物に阿片の詳しい記述が登場します。詩人ホメーロスはこの草を忘却草と呼び、ウェルギウスは催眠の薬と呼び、奴隷の持ち主もいくつかのケシを植えました。悲しいことに、病気を癒やす働きが知られるほどケシは夢や幻と結びつき、人間の利己心と強欲が理性や道に勝って、人を巨大な利益へ駆きたててしまいました。かつての幸福は、やがて邪悪な薬物と悪魔の花の源にもなったのです。
古代エジプトではケシは神の花と呼ばれました。古代ギリシャ人は敬意を表して、ケシの花を手にした眠りの神や農神に祈りをささげました。ケシの物語はギリシャ神話にも流れています。眠りと死を司る神がいて、その子どもは手のひらにケシの実を抱きしめ、眠る父を守って目覚めさせないようにしている、と語られます。
